Zephyr Cradle Diary


2019.01.21 (Mon)

[音楽] 光のオーケストラ 追憶行(編曲編)

先日は新宿くんだりまでお越しいただきありがとうございました。来場された方々のTwitterでの感想やアンケートを拝読した限りではとても好評だったようで、いち楽団運営・いち奏者として、ほっと胸をなでおろしております。

どのくらいのペースになるかは分かりませんが、編集後記という体で自分もちょっとずつ記事を上げていこうかなあと思います。まずは編曲(オーケストレーション)として参加した視点からのものをば。これが一番シンプルに語れる部分なので。

演奏会のセットリストはこちらから。

■2-2 壮麗なる皇都

……の「風に向かって ~クルザス西部高地:昼~」部分の編曲担当でした。どうも、クルザス西部高地過激派です。

パンフレットの楽曲解説にも色々書きなぐったのですが、自分は本当にこのクル西が好きでして。蒼天編で最初に訪れるフィールド、あのv2.5のストーリーの絶望感・虚無感からのあのサウンドと情景は、本当に心に突き刺さりました。今でもめちゃくちゃ好きです。一人でぼんやりするならクル西だなーと思ってます。釣り師としても思い出深く。バケツ的な意味で。

それだけ好きなもので、選曲にこの曲を入れたのも自分の独りよがりだったような気もするんですが、とにもかくにもこの曲を生演奏で聴きたいというそれ一点でした。自分の中の「FF14の中で生演奏で聞きたい楽曲ナンバーワン」が圧倒的にこれ。

そんな思いもあったので編曲としては、原曲の通りに弦楽+ピアノのごくシンプルな構成を基点に、プラスアルファとしてオーボエ、ビブラフォン、ハープを足してちょびっとだけ雰囲気を出しています。以前、弊FCによる「Life of Ishgard」という同人CDでもアレンジしたことがあるのですが(下記)(宣伝)、これよりももっと原曲に寄せた感じですね。

単なる弦楽アンサンブルにしても良かったのですが、個人的には少々「味気ない」と思ってしまい。いえもちろん弦楽アンサンブルは好きオブ好きなんですが、こういう重厚な弦楽にそっとオーボエのメロディが乗ってくるのがめちゃくちゃ好きなんですよ……わかりますか……。あの切ないメロディにオーボエを重ねたのは、完全に自分が聞きたいがための選択です。練習のときは染み入るように聴きました。

ビブラフォンとハープはぎりぎりまで悩みました。ともすれば蛇足になるかも……と悩んだ末、ゲーム内のクル西の空気感を下支えするためにも入れることにしました。演奏会で絵として表現できない部分をこの2パートに込めていました。

また自分の普段のアレンジでは、こういう曲にはよくウィンドチャイムを軽率に入れがちなんですが、今回は封印しました。確かに雪景色というだけであればウィンドチャイムが似合うのですが、クル西はそういう場所じゃあないので。

余談ですが、メドレーとしてはこの曲の前に「雲霧街の夜霧 ~イシュガルド下層:夜~」「堅牢 ~イシュガルド下層:昼~」が入ります。この昼と夜の順番、どっちが先にしようかーという話を編曲したしゅーちゃんとしていたのですが、

だ「クル西は昼のアレンジだし、時間軸的にイシュ昼→クル西昼に入るのが自然じゃない?」

しゅ「それでいこう。自分もそういえば最初にイシュガルドに踏み入れたのは夜だったので、夜から始まるのは感慨深い」

なーんて経緯がありました。

■1-7 氷結の幻想

「雪上の足跡 ~蛮神シヴァ前哨戦~」「忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~」の2曲構成のメドレーです。

奏者の方々には色々とご迷惑をおかけしてしまった曲なので正直こうして語るのは気が引けるのですが、それはまた別途……。

最初にぶっちゃけてしまうと、フルオケで前哨戦をやったら絶対すごい(語彙力)というのが選曲のきっかけの1つでした。他にも、公式オケではやらなさそうだからという思惑も。なんにせよ、ヒカオケだからこそ出来る曲をやりたいというものがありました。

世の中的には、後半フェーズの忘却の彼方こと「Oblivion」のほうが圧倒的に有名だと思います。Oblivionに入るところでズダダダって入るスネアドラムめっちゃ好き侍。でも個人的には、Oblivionを聞いた後に前哨戦を聞いた時の「あ、あれ……前哨戦ってこれOblivionのメロディめっちゃ入ってるじゃん!?」と初めて気づいた時の衝撃は、今でも忘れられません。それ以来あーーー好きーーーーってなって今に至ります。前哨戦とOblivionのギャップ、とても良いですよね。シヴァにまつわるエピソードを思い出しつつ、静と動がうまく対比された2曲だと思います。

前哨戦に関しては大きな手を加えることなく、ほぼ原曲通りに。だって原曲が一番最高ですものね。ただ中間部でテンポそのままに3拍子→2拍子に変わる個所、耳コピ・採譜しながらこのギミック鬼すぎますわって思っていました。弦と金管が鬼畜譜面。

ただこの、ある種ブレイクとも言える部分がもっともこの曲の「静」を表しているので本当に好きでした。そしてそのあとに sub.p(即座に音量をpに落とす)からの元のテンションへの戻り部分、とても脳汁出まくる部分です。器楽・合唱ともに最高の sub.p を表現してもらえました。ありがとうございました! この部分、自分は演奏なかったのでたっぷり堪能しました。

前哨戦の最後、気付かれなかったかもしれませんがウィンドチャイムがキラキラとちょっと長めに鳴っていました。言うまでもなくこれは作中にもあるダイアモンドダストの演出で、外周を回っているシヴァ。そのあとにバスドラが大きく低音を鳴らしてからの指パッチン。原作通りに演出しました……と言いたいところですが厳密には本当はこの低音って2回鳴るのが正しいです。ただそれだとしつこいし分かりづらいので、譜面上はショートカット演出ということで1回にしています。本来の正しい演出は、ラーニングついでにシヴァを見に行ってね!

さて問題は後半戦です。何が問題って、公式オケで素晴らしい弦楽アレンジをやってくださってしまっているし、またバンド版の公式アレンジアルバムにも素敵なアコギアレンジをやってくださっている。本当にシヴァは愛されているんだなあと思います。まあ原作のあの演出はね……ズルいよね……。

ヒカオケ版はというと、これはもう合唱が居てフルオケが居るんだからということで、「テンポそのままにフルオケ化したOblivion」にしました。何よりもテンポを落としたくなかったんです。あの後半の滾る「動」の部分をそのままフルオケ化したい。それがコンセプトでした。泣ける演出は公式が全部やってしまった、だからヒカオケではそれとは違うことをやろう、と思いました。特に前哨戦をやると決めた時から、これはあのシヴァ討滅戦の流れを再演(再現)するのが役割だと、自分の中で定義していました。

Aメロ・Bメロに関しては、器楽のみにするからこそ映える部分だと思っていたので器楽のみでテンションを構築させる。(原曲を知っている人にとっては)いつ歌詞が入るのかと焦らして焦らしたあと、サビに入ったところで満を持して合唱が分厚く高らかに歌い上げる。これが自分なりのシヴァ討滅戦でした。

ただ、そんなことを言っておきながら最後をしっとりめな終わり方にしてしまったのは、ホント許してって感じでした。後奏部分を「弦と合唱のみアンサンブル」で聴きたかった。アレンジしてサビを作り終わった後に、ふとそんな欲求が出てしまったのでした。合唱としては同じ歌詞を繰り返しているだけの部分ではあるのですが、そこに重厚な弦楽を合わせることによって何倍もの思いになる、と信じていました。うまくできていたといいな……と思う部分です。

そんなこんなで大がかりなシヴァでしたが、実際に聞くとほとんど駆け抜けてしまうアレンジなので、じっくりと楽しむことは出来なかったとは思いますが。人気曲だからこそ物凄いプレッシャーを感じた1曲でした。

■アンコール3 紅蓮のリベレーター駆け抜け版

……の「紅の夜明け ~クガネ:昼~」の部分のみ担当しました。実のところ10小節くらいしかない。長めのスキルのリキャ回る前に終わる系。

パーカッションに始まって、弦と木管のアンサンブルでしっとりと描くクガネ。なお譜面上はタムって書いてたんですが、新宿文化センターに和太鼓あるよってことで急遽和太鼓へ変更されました。しっかし実物見たらめっちゃでかくて、ピアノの裏に置いていたもののモロバレでしたね! はいあの和太鼓はこの曲のこの10小節くらいのためだけに存在していました。それと色んな鈴や錫杖(!)を用いた打楽器演出でしたが、いずれも打楽器パートでの独自解釈での楽器選びです。凄い。

特にひねったことはやっていないのですが、琴に関してはハープとシロフォンでかけあわせてやっていました。いや琴の奏者を探してお願いする手はありましたが、流石にこのためだけに呼ぶのも、ちょっと、ねえ。

選曲的にはこの次に「鬨の声」(4.xシリーズのIDボス曲)が待っており、メロディ自体このクガネと同じなので、クガネをさくっと終わらせることで鬨の声を2ループやることになりました。まあ紅蓮メドレーなんだよ感を担うのがこのクガネ部分の役割でしたので、じっくりたっぷりやってしまったらそれはアンコールではないでしょうよ、ということで。

あとはご存じのとおり、紅蓮を一気に駆け抜けるメドレーへと繋げていったのでした。

あ、すごく余談なんですが、演奏会本編(アンコールやプレコンサート、お見送りを除く)のメドレータイトルは大半をゲーム内のメインクエスト名またはコンテンツ名から引用しています。単なる「○○メドレー」とかって書きたくなくて(譜面上はそうなっていましたが)、かといって曲名ただ並べただけにもしたくなくて……。パンフレット作成時に色々悩んだ結果こうなりました。一応自分的には満足した語選びになったのではないかと……。パンフレットにメインクエスト名が並んだことによって、我々の冒険を最初から回顧するような流れの演奏会になったことに、一役買えたのではないかと自負しています。

……編曲としての後記としてはそんなところでしょうか。

運営、奏者としての話はまた別途書きたいと思います。もうちょっと自分の中で整理が出来たら、になるかな。