Zephyr Cradle Diary


2005.05.09 (Mon)

[心理学] 血液型性格診断

あれ、mixi でなくこっちにも以前書いたような気がするのですけど……ないのでこっちでも書きましょうか。自分も先日 mixi のほうでちょこっと触れましたし Lenster 氏も丁度触れてますし、心理学を学んでる人間として書かねばなりません。アンチ血液型性格診断として。mixi 見れる人はそちらもあわせてどうぞ。たぶん今ここに書いてる方が詳しいと思いますが。

当方が言いたいのは「血液型性格診断に化学的根拠は何もない」ということです。それを踏まえた上でお読み下さい。

心理学的に見るとというか心理学的に見なくても「人間をたった四つのパターンに分類する」ということが如何に愚かで無駄なことかはご理解頂けるかと思います。「人間四種類しか居ませんか」と訊かれたらそりゃ「はい」だなんて絶対言えないでしょう。

しかし巷に(たぶん日本だけですが)血液型でカテゴライズするのが流行しているのは何故か。

まあそういうマスコミやらの情報云々にはあんまり詳しくないのですが、第一に「日本人はこういうのが好きだから」というのがありますね。占いとか、性格診断とか。大陸から輸入された「占星」や「風水」、「陰陽」は今でも建築などに良く使われますし、そもそも京都の都は風水に基づいて遷都されていますしね。そういった、いわゆる風潮から元々根付きやすいテーマなのでしょう。

第二に、これがまた一番問題なのですが「当たってるから」です。そう、血液性格診断は割と当たってるんです。これは否定できません。じゃあ何故そんなにも当たるのか。それなのに何故化学的根拠(科学でなく化学だという部分がちょっとミソです)がないのか。そこが最も重要な部分なのでもう少し掘り下げます。

血液型と性格を一覧にした表というのがよくありますね。あれを一つずつずらして、つまりA型をB型にして、B型をO型にして、という表を作って「これに当てはまってる?」と見せると8割の人間が「当てはまってる」と答えたという実験があります。これはどういうことなのか。これはもはや一種の手品のようなものです。俗にペテンとか詐欺とかとも言いますが、それはさておき、この仕掛けは非常に簡単です。書かれている血液型の性格は比較的万人に当てはまるような特性(*1)なのです。例を挙げましょう。

  • 規則や決まり事をきちんと守る努力をする
  • 自分の目標をしっかりと持っている
  • 人に負けることをとても嫌う
  • 束縛されるのは嫌
  • 人間関係に重きを置く
  • 平和を望む優等生タイプ

どれがどの血液型の特性だか判りますかね。一応ネットで調べて各血液型の性格から抜粋してきたものですが、ここらへんのものはどれも誰にでも当てはまることでしょう。規則や決まり事は普通守りますし、他人に負けるのは誰だって嫌です。こういう風に誰にも当てはまるんですから一つずらしたところで結果は大して変わらないということです。

当然ながらこれで括れない特性も書かれていたりします。それらは大概アンケートなどの統計を元に書かれています。「なんだ統計ならいいじゃないか」と思うかもしれませんがそんなことはありません。血液中に流れる○○という物質が性格形成に大きな影響を及ぼす、とか言った類の「化学的」根拠があってこそ初めて血液型との関連性が見出せるのであって、ただの統計だけじゃ他の要因を無視出来ません(*2)

例えば「ビール出荷量が増えると溺死者が増える」という統計結果があります。これ一見すると「ビールが溺死者を増やしてる」ように見えますが実際は全然違って、第三の要因というのが存在するのです。つまり「夏」です。「夏はビールの出荷量が増える」のと「夏は溺死者が増える」というだけの話なんですが、間違った統計の仕方をするとこういう困った統計結果が出ます。これよくマスコミがやり、結果情報操作という形になりますので注意して下さい。この代表例が「ゲーム脳の恐怖」なのはお判りでしょう。本を読めば判りますがあれも生理学的根拠はなくただの統計結果です。

因みにこれを利用すると、日本人に一番多いのはA型で、日本人は割と几帳面なので、つまり「A型は几帳面」とか書いておけば大体当たるだろう、っていうのも作れたりします。鶏が先か卵が先か、みたいなお話ですけどね。

そしてもう一つ、これが一番怖い原因なのですが、血液型性格診断に影響されてその性格になってしまう(*3)ということです。こういうのは割とよくあります。他人に「お前お人好しだよなー」と言われたら「ああ、そうなのかも」と思いこんでしまってそれ以来本当にお人好しな性格になってしまう。これが何故怖いかというと本人に自覚症状がないからです。こういう他愛のない会話とかマスコミの情報とかの積み重ねで自然とそうカテゴライズ出来てしまう性格に落ち着いてしまう可能性は必ずしも否定できません。

以上、(*1)〜(*3)までが血液型性格診断の化学的根拠のないにも関わらず当たる理由です(統計学は科学なので「科学的」根拠はあります。一応)。

これを踏まえた上で、血液型性格診断を信じるか信じないかはこちらの関与すべき部分ではありません。当方はただこの性格診断には根拠がないのだよという話をしただけであって、これを妄信するのが悪いと言っているわけではありません。信じるにしても、取り敢えずこういった事情を知っておくべきだと思います。知っているだけでまた少し観点が変わりますからね。情報は多く持っているに越したことはないです。

ただまあ信じるのは悪くないですけど、自分は初対面でまず血液型を訊いてくるような人間を好きになれないです。

というわけで、取り敢えず心理学を学ぶ人間として言っておかなければならないので書きましたが正直長くなりすぎたので日記に書くべきじゃなかったなーと反省します(笑)。いちコンテンツとして設けられるほど書いちゃった。今度トップにでもリンク貼っておこうかな。